【解説!!】地方公共団体はどのように「多言語音声翻訳サービス」を導入すれば良いのか?
今回は、総務省が2021年(令和3年)4月に発表した「地方公共団体における『多言語音声翻訳サービス』の導入ガイド」について解説します。(2023年9月27日更新)
地方公共団体における 「多言語音声翻訳サービス」の 導入ガイド
令和3年4月 総務省 情報流通行政局 情報流通振興課
<目次>
目次[非表示]
- 1.そもそも、なぜ総務省がこのようなガイドラインを作成したのか?
- 2.多言語翻訳サービスとは?
- 2.1.概要
- 2.2.特徴
- 2.3.費用
- 2.4.期待できる効果
- 2.5.導入に当たってのタスク
- 3.多言語翻訳サービスを導入する為のポイント
- 3.1.まずは外国人住民対応の実態把握から
- 3.2.関係者に必要性を理解してもらう
- 3.3.補助金の利用を考える
- 4.運用の際のポイント
- 4.1.よくある課題
- 5.筆者からのまとめ
そもそも、なぜ総務省がこのようなガイドラインを作成したのか?
2010年から2020年の10年間で在留外国人の数は約40%増の288万人
日本に住む在留外国人は2010年から2020年の約10年間で208万人から288万人と 約1.4倍に増加しており、外国人の方と接する機会が年々増えています。
そして、地方自治体でも昨今「多文化共生」という言葉が掲げられ、多文化共生課という部署を設ける自治体も増えております。
ただ、何から始めたら良いか分からないという担当者の方も多いのではないでしょうか。
この状況を完結に言うと、
「近年外国人住民は増えている一方、その外国人住民が日本語を完璧に話せるわけではない。」
↓
「なので、自治体としては外国人とコミュニケーションを取るために通訳者が必要になる。」
↓
「ただ、対応する言語は英語だけでなく、各言語別に通訳者を雇うことになると膨大な人件費が必要になる。」
↓
さぁどうしようか・・・
この状況を打開する為に、総務省は「『多言語音声翻訳サービス』を導入してみてはどうですか?」「こんな手順がありますよ。」という意味でガイドラインを作成した背景があります。
多言語翻訳サービスとは?
概要
「状況は理解しているよ。それ以前に多言語翻訳サービスとはなんだ?」という方もいらっしゃると思いますが、ここの説明も総務省のガイドラインには記載があります。
多言語翻訳サービスとは、様々な状況で訪れる外国人住民とのコミュニケーションに特化したサービスです。
特徴
多くのサービスの特徴としては、タブレット端末やスマートフォンを通して、複数の言語を認識、それを指定の言語に翻訳するというものです。
ですので、通訳者のようにスケジュール調整を行う必要がなく、さらにすぐに導入することが可能です。
中には、専門用語を辞書登録できるものや、翻訳後の内容を再度、 入力時の言語に翻訳し、表示する逆翻訳機能を備えたサービスもあります。
これは意図した通りの翻訳になっているのか確認する為の機能です。
そして会話の記録を残してくれるサービスもあるので、その記録から対応を改善することも可能になります。
費用
サービスや利用機能・言語によっても異なりますが、1台もしくは1アカウントを導入するのに、月額数万円から導入できるのも特徴です。
期待できる効果
- 外国人住民と深いコミュニケーションが取れるようになる
- 外国人住民とセンシティブな内容の会話が可能になる
- 外国人住民の心理的な負担を軽減できる
*ガイドラインには記載がないですが、こういったサービスはセキュリティ対策もしっかり行っているので、一般の翻訳サービス(google翻訳等)を利用するよりも、情報流出の観点から考えると安全性が高いのも特徴です。
導入に当たってのタスク
導入までのタスクとして基本的なものを順序毎に以下の図として作成してみました。
1~3まではかなり時間がかかる可能性がありますが、4~6までは最短で2週間程度で可能な場合もあります。
ただ、サービスを導入する前、ほとんどのサービスでトライアルを行うことができるので、目星を付けたサービスを1ヶ月程度トライアルをして、本当に課題を解決できるものなのかを確認することも大事です。
基本的な順序 |
タスク |
1 |
導入を推進する担当者の決定 |
2 |
翻訳サービスに関わる調整が必要な部門と連携 |
3 |
地域の外国人住民の現状と現場の課題を把握 |
4 |
対応言語や業務に見合ったサービスを選択 |
5 |
調査結果をもとに財務部門をはじめとする関係者へ説明して予算を確保 |
6 |
翻訳サービスを活用してもらうためのルール作りや庁内外への周知 |
多言語翻訳サービスを導入する為のポイント
まずは外国人住民対応の実態把握から
導入にあったって、まずは外国人住民対応の実態を把握しましょう。
なぜかというと、地域によって在住外国人の傾向(資格・居住年数等の特徴)が異なり、求められる言語対応が異なるからです。
そして、その傾向を把握して上で多言語翻訳サービスの利用する際は、翻訳できる言語数を制限したり、機能を制限することでが可能になり、コストを抑えることが可能になります。
例えば、ブラジル人の外国人住民の割合が多い場合、標準搭載されている英語や中国語の翻訳機能に加えてブラジルポルトガル語を追加するだけです。
多言語翻訳サービス側も翻訳できる言語数の数をアピールポイントとして強調するはずですが、必要な言語だけ選択すれば良いのです。
実態把握を行う方法として、ガイドラインでは以下の方法が紹介されています。
- デスクサーチ
- 現状あるデータを把握 たり、Google検索等でのリサーチを指します。
- ヒアリング
- 組織内でのヒアリングが主で、どの部署で必要とされているのか、どういった相談内容での対応に苦労しているのかのヒアリングです。
- アンケート
- 主に外国人住民向けで、どういった手続きに不安があるのか等を把握するアンケートです。
*ただ、3.に関してはそもそも外国語対応ができる職員がいないから多言語翻訳サービスを導入しようとしているので、アンケートの回答を外国人住民からもらうには、アンケート自体も外国語で作成する必要があるということを踏まえると、ガイドラインが若干矛盾しているのかなという印象はあります。
関係者に必要性を理解してもらう
外国人住民対応の実態も把握して、多言語翻訳サービスのトライアルも行った後、大きな壁になるのは予算確保です。
外国人住民の数は、全体住民に対して数パーセントであるケースが多く、正直ここに予算をかけるのは費用対効果としては良くないと判断されることが多いでしょう。
補助金の利用を考える
多言語翻訳サービスの導入に関しては、国や市からの補助金を利用できます。
交付金の種類はいくつかあり、「デジタル田園都市国家構想」や「重層的支援体制整備事業交付金」等がございます。
補助金の中には、導入・運用費用の「5分の4を交付してもらえる」ものもあるので、是非確認することをお勧めします!
期間も、限定的なものがあるのでその点も忘れずにチェックしましょう。
参考 : 自治体交付金に関する解説資料&動画を大公開
ただ、自治体などの場合はマイノリティであっても無視できない大切な住民ですし、災害時のことなども想定しなければいけません。
ガイドラインでは、以下のような具体例を説明するのが良いと記載があります。
項目 |
具体例 |
---|---|
防災対策 |
平時を想定した利用としては過剰なサービスであっても、災害時の場合は 誰一人取り残さないようにメッセージを伝える必要があることを説明 |
市民サービスの向上 |
外国人比率が少なくても、外国人住民も日本人と同様のサービスを 受ける権利があることを説明 |
行政のデジタル化 |
国を挙げて住民の利便性向上と行政の効率化を図る使命があることを 説明 |
外国人との共生社会 |
「人や国の不平等をなくす」「住み続けられるまちづくりの実現」などの ビジョンと合わせて説明 |
運用の際のポイント
よくある課題
導入後の運用時に頻繁に課題になるのが以下の2点です。
- 導入されたことが関係者に周知できていなかった
- 使い方が関係者に周知されていなかった
上記のようなことが起こると、「せっかく導入したのに・・・」という気持ちにもなってしまいますし、一般の翻訳サービスを利用することにも繋がるので安全性の面でも問題になってしまいます。
このようなことを防ぐために、ガイドラインでは実際に使ってもらえるような機会(説明会)等を設けることが良いと記載があります。
筆者からのまとめ
日本でもグローバル化、ダイバシティ化というワードが定着しつつある近年、これからも日本で暮らす外国人は多くなることが予想されています。
それに従って、日本語でだけでのコミュニケーションでは解決できない部分も多くなることが予想できます。
限られた費用の中で、住民を守ったり、住民対応を多様化して満足度を上げる為に、通訳者を雇うよりも圧倒的低予算で始められる「多言語翻訳サービス」の導入をまずは検討してみることをお勧めします。
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