自治体窓口DXとは? 概要や取り組みに合わせたサービスの紹介
昨今、デジタル技術を活用したライフスタイルやビジネススタイルを変化させていくDX(デジタルトランスフォーメーション)が注目を集めています。
市役所や区役所などの自治体でも、さまざまな窓口業務をデジタル化する取り組み『自治体窓口DX』がデジタル庁により推進されています。
この記事では、自治体窓口DXによる取り組みや推進についての国からの支援、DX化による窓口対応のサービス向上などについて解説します。
目次[非表示]
- 1.自治体窓口DXとは
- 2.自治体窓口DX推進によって解決すべき課題
- 2.1.行政サービスを受ける住民側の課題
- 2.2.行政サービスを提供する自治体職員側の課題
- 3.国によるDX推進への支援
- 3.1.窓口BPRアドバイザーの派遣と育成
- 3.2.自治体窓口DXSaaSの構築
- 3.3.デジタル改革共創プラットフォームの提供
- 4.DX化による窓口での外国人対応の品質向上
- 5.まとめ
自治体窓口DXとは
『自治体窓口DX』とは、マイナポータルや地方自治体独自の電子申請システムの利用による行政手続きのオンライン化を進める取り組みを指します。デジタル庁によって推進され、行政手続きにおける住民の負担軽減、地方自治体職員の業務効率化を目標としています。
自治体窓口DXの推進は、窓口だけの表面的な変革ではなく、自治体組織全体の効率性・柔軟性を根本的に高める効果が見込まれています。
自治体窓口DX推進によって解決すべき課題
現在、窓口対応の業務において、さまざまな課題があげられています。自治体窓口DXを推進することにより、住民側・職員側のそれぞれの課題を双方から解決することが期待されています。
行政サービスを受ける住民側の課題
自治体窓口を利用する機会は、戸籍や社会保険に関する手続き、税金関係の申請や相談など多岐にわたります。多くの住民が窓口を訪れるため、手続きによっては時間がかかることも珍しくありません。窓口の待合スペースで長時間待たされる経験をした方も多いのではないでしょうか。
待ち時間のほかにも、自治体窓口を利用する際に住人が負担や不満に感じることは複数あります。そのなかから代表的なものとして以下が挙げられます。
▼住民側の課題
- 手続きの際に申請書や提出書類に何度も同じ項目を書く必要がある
- 書類の提出、修正の確認などその都度待ち時間がある
- それぞれの手続きごとに該当の課の窓口を回る必要がある など
行政サービスを提供する自治体職員側の課題
住民側に負担があるのと同じように、自治体職員側にも多くの負担があります。自治体職員にとって解決したい課題については下記のとおりです。
▼自治体職員側の課題
- 手続きの申請書ごとに記入方法を説明する必要がある
- 記入内容の確認作業を行う必要がある
- 業務が複雑なため標準化が難しい
- 人口減少による労働力不足の深刻化が推定される
総務省が発行する資料『令和4年 情報通信に関する現状報告の概要』によると、日本の生産年齢(15~64歳)の人口が2050年には5,275万人まで減少すると見込まれています。人口減少の影響で、従来のシステムだと窓口業務が回らないことが予想されるため、DX化による課題解決が期待されています。
▼高齢化の推移と将来推計
画像引用元:総務省『生産年齢人口の減少「高齢化の推移と将来推計」』
出典:総務省『令和4年 情報通信に関する現状報告の概要』
国によるDX推進への支援
『自治体窓口DX』を進めるには、自治体それぞれがデジタル技術やAIを活用することによる業務効率化を図り、行政サービスの向上につなげるために必要なシステムの導入や業務内容の改善を行う必要があります。
専門的な知識を必要とする部分もあり、自治体だけでDX化を実現させることは簡単ではないことから、国がさまざまな支援を行っています。
窓口BPRアドバイザーの派遣と育成
窓口BPRアドバイザーとは、他自治体の事例の共有やアドバイスなどを行える自治体窓口DXに精通する地方自治体職員や専門家のことを指します。
自治体窓口DX推進に対して強い志があり、支援による効果が見込めそうな自治体を対象に「窓口BPRアドバイザーの派遣」を行う支援が行われています。
▼窓口BPRアドバイザーの派遣の内容
- オンラインおよび現地派遣により窓口BPRアドバイザーの指導や助言、情報提供を受けることができる
- 原則1自治体当たり3回の実施が可能
- 窓口BPR自走のサポートが目的であり、コンサルティングではない
出典:デジタル庁『窓口BPRアドバイザー派遣事業』
自治体窓口DXSaaSの構築
『自治体窓口DXSaaS』とは、自治体窓口DXを推進しやすくするために複数の事業者がガバメントクラウドに構築した「窓口DXに資する共同利用型のパッケージシステム」のことを指します。
▼自治体窓口DXSaaSの内容
- 複数の事業者がさまざまな機能をガバメントクラウド上に展開
- 手続きガイダンス、申請書作成、マイナンバーカードの利活用、他サービスとのAPI等の連携といった基本機能が具備されている
- 複数あるサービスから、課題解決に有用なものを選定、利用できる
自治体窓口DXSaaSの活用により、仕様書を一から作成し、新しいシステムを構築するといった負担が軽減されます。また、サービスを提供する事業者の創意工夫により、機能の充実や継続的な改善が期待できます。
出典:デジタル庁『自治体窓口DXSaaS』
デジタル改革共創プラットフォームの提供
共創プラットフォームとは、地方公共団体と政府機関の職員であれば誰でも参加できる、Slack(※)を活用したコミュニケーションプラットフォームのことです。
利用するにあたって、農林水産庁が管理するeMAFF IDへ登録する必要があります。
▼デジタル改革共創プラットフォームの内容
- 地方公共団体と国との間のフラットなコミュニケーションを実現する
- 誰もが自由に課題・アイデア・アドバイスを投稿し自由な意見交換ができる場の提供
国からの通知に関するユーザー同士の情報共有や、政府機関職員が国の政策立案に関する質疑応答する場として活用されています。2024年7月1日時点では、1,379の地方公共団体から約8,300人が参加しています。
※Slackは、Slack Technologies, Inc.の商標および登録商標です。
出典:デジタル庁『デジタル改革共創プラットフォーム』
DX化による窓口での外国人対応の品質向上
市役所や区役所などの自治体窓口は、日本に住む外国人が多く訪れます。
来庁の目的は行政手続きや福祉・防災に関する手続き、住民サービスの相談窓口などさまざまです。在留外国人対応のため、申請書類や資料に主に英語を併記するといった対策を行っている自治体もあります。
しかし、英語以外を必要とする人も多くさまざまな言語への対応が必要です。自治体窓口DX化の推進はこういった外国人対応における課題解決にも有効です。
『書かない窓口』による申請書作成の負担軽減
現在、行政手続きを申請する際、申請書の必要項目を手書きで記入し提出するという流れが一般的です。しかし、在留外国人には日本語を書くことが難しい方も多くいるのが実状です。
また、場合によっては外国人の書く文字の解読が難しいため、窓口のスタッフが在留カードやほかの身分証明書と照らし合わせての確認が必要でした。通常であれば申請書のみをチェックすればよいところ、身分証明書の提出をお願いし確認するといったステップを追加することから、対応時間の増加やスタッフの負担増加が課題になっていました。
このような申請書をデジタル化することにより、外国人の書類記入が容易になり、窓口のスタッフも確認作業を簡略化できるといったメリットにつながります。
AI通訳や遠隔通訳によるサービス向上
在留外国人の母語は人それぞれです。話者数の多さが英語に並ぶ中国語、スペイン語、日本に住む外国人の割合から韓国語、ポルトガル語などほかにもさまざまな言語話者が来庁することが考えられます。
書類や申請書などがデジタル化したからといって窓口でのコミュニケーション機会がなくなるわけではありません。サービスや手続きの案内やさまざまな相談など、外国語での対応が必要な場面は多いため、窓口業務でもそれぞれの外国語話者に対応できる通訳が必要です。
しかし、幅広い言語に対応できるスタッフを窓口に常駐させることは、言語によっては人材が少ないことや人件費が多くかかることから現実的ではありません。
そこで、有効なのがAIによる機械通訳やオペレーターによるビデオ通訳などを利用できるサービスの導入です。このようなサービスには、複数言語での対応や行政用語の登録が可能なオプションもあります。うまく活用すれば通訳の専門スタッフに頼ることなく、相手の言語に合わせてコミュニケーションを取ることが可能になります。
まとめ
この記事では、自治体窓口DXについて以下の内容を解説しました。
- 自治体窓口DXとは
- 自治体窓口DX推進によって解決すべき課題
- 国によるDX推進への支援
- DX化による窓口での外国人対応の品質向上
現在予想されている将来的な少子化や人口減少の問題から、あらゆる自治体や企業での業務改革が必要とされます。デジタル庁が推進する『自治体窓口DX』が今後発展していくことにより、自治体職員の業務負担の軽減が期待されます。加えて、地域住民にとっても待ち時間の短縮や手続きの簡略化など多くの課題解決が期待されています。
また、在留外国人の増加に伴い、自治体窓口での外国語対応への対策も必要です。外国人対応には、通訳スタッフの配置だけでなく、各職員が通訳スタッフを頼ることなく対応できる環境を整えることが重要です。
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