手話通訳とは? 窓口・レセプション業務で必要とされる理由や役割
手話通訳とは、手話を用いて聴覚障がい者と健聴者とのコミュニケーションを通訳することです。2022年の厚生労働省の調査によると日本の聴覚・言語障がい者は約37万人であるといわれています。
▼身体障がい者手帳所持者数と聴覚言語障がい者数(年次推移)
年次 |
身体障がい者総数 |
聴覚・言語障がい者 |
2011年 |
3,864千人 |
324千人 |
2016年 |
4,287千人 |
341千人 |
2022年 |
4,159千人 |
379千人 |
厚生労働省『令和4年生活のしづらさなどに関する調査 (全国在宅障害児・者等実態調査)結果』を基に作成
聴覚に障がいを持つ方やその周りの人にとって、“手話通訳”の存在は重要です。ただし、手話を習得するのは簡単ではないため、現状として手話通訳士の人数は多くはありません。
この記事では、手話通訳や通訳が必要とされる理由などについて詳しく解説します。
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出典:厚生労働省『令和4年生活のしづらさなどに関する調査 (全国在宅障害児・者等実態調査)結果』
手話通訳とは
手話通訳とは、聴覚障がい者と健聴者の意思疎通を手話を用いて通訳することです。「手話」は、聴覚障がい者のコミュニケーション手段であり、一つの言語として位置づけられています。しかし、手話を理解している人は決して多くありません。一人が手話を用いて表現しても、相手が手話の知識がない場合はコミュニケーションが困難になります。
そこで、聞こえや発声に障がいのある聴覚障がい者、聴覚障がいを持たない健聴者双方の発言を通訳しコミュニケーションを円滑にするのが手話通訳です。
通訳の現場では幅広い知識と高度な通訳技術が必要になるため、それらを公認する公的資格があります。手話通訳士として活動するには、厚生労働大臣が認定した社会福祉法人聴力障害者情報文化センターが実施する『手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)』に合格し、登録を行うことが必要です。
現在、日本で登録されている手話通訳士の人数は4,194人(2024年3月29日現在)です。
出典:厚生労働省『手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)について』
手話通訳の役割
手話通訳の役割は、聴覚障がい者と健聴者双方に、的確な情報を伝えることです。それぞれの言葉から得られる意図や情報を正しく理解し、すべての内容を提供することが通訳の役目といえます。
通訳によって、双方の公平な立場を保ち、円滑で豊かなコミュニケーションをとることが可能になります。下記は手話通訳が必要とされる場面の一例です。
▼手話通訳が必要なシチュエーション
場所 |
手話通訳が必要な場面 |
役所 |
窓口での手続き |
病院 |
受付や会計 医師・看護師との会話 |
宿泊施設 |
レセプションでの手続き |
商業施設 |
店員への問い合わせ
会計
|
講演会場 |
受付
講演者が話す内容の理解
質疑応答
|
裁判所 |
聴覚障がい者の権利の主張や訴えの伝達
裁判内容の正しい理解
|
手話通訳士は、双方がスムーズにコミュニケーションをとれるよう、話し言葉を手話にして聴覚障がい者に伝え、反対に手話は会話調の文章にして手話を使わない相手に伝えます。
役所や病院の手続きは、コミュニケーションの内容によってはその人自身の人生に関わる可能性もあります。特に裁判や医療の現場では、専門的な言葉を理解して通訳することが必要です。
両者が会話するときの目的を果たせるよう、手話通訳には高度な技術が求められます。
聴覚障がい者とのコミュニケーション方法とメリット・デメリット
聴覚障がい者が役所や商業施設の窓口で手続きを行う際、提供される情報やサービスに格差が生まれないような対策が必要です。
各種窓口やレセプション業務において、聴覚障がい者との意思疎通の安定を保証するためのコミュニケーション方法について紹介します。
手話通訳
手話通訳士が間に入り、手話と音声会話双方のコミュニケーションを行います。
▼手話通訳のメリットとデメリット
メリット |
手話通訳士が会話内容を自然な手話表現で通訳するため利用者の理解が深まる
伝達スピードが速い
|
デメリット |
手話通訳士が立ち会う場合、雇用や人員の確保や対応スケジュールの調整などが必要 |
ビデオ通話を通してオペレーターの遠隔手話通訳を活用し、聴覚に障がいを持つ方の受付を行っている役所や宿泊施設もあります。
この方法なら、手話通訳士が現場へ行く必要はないため、人員の確保やスケジュール調整といったデメリットを解消できます。
筆談
筆談は、紙やボードに話したいことを書いてコミュニケーションをとる方法です。
手話はなじみのない人も多く、習得に時間がかかりますが、筆談なら手話通訳なしでコミュニケーションがとれます。
▼筆談のメリットとデメリット
メリット |
手話を習得していない人でも文字を通して相手と会話が可能
正確な情報を文字に起こせるため、誤解を避けられる
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デメリット |
文字を書くのに時間や手間がかかる
感情の表現が難しい
人によっては文字を書くのが難しい場合がある
|
筆談は文字によるコミュニケーションになるため、感情を表現するのが難しい場合があります。また、聴覚障がい者のなかには言葉の習得に影響があり、読み書きが苦手な人もいるため、会話する双方の状況に応じて活用することが望ましいといえます。
音声認識
音声認識はタブレット端末やスマートフォンなどを使って行うコミュニケーションです。
音声を自動で文字に起こすことで、筆談に近い使い方ができます。
▼音声認識のメリットとデメリット
メリット |
手話を習得していなくても意思の疎通が図れる
視覚的にスムーズに情報を得られる
筆談に比べて情報伝達スピードが速い
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デメリット |
自動での文字起こしは誤認識を起こす恐れもあり100%完璧ではない
文字を読むのが苦手な人には不向き
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音声認識による通訳は、場合によっては完璧ではないこともあります。しかし、手話通訳士の人員確保や筆談の手間を省くことができるため、効率のよいコミュニケーションの方法の一つといえます。
まとめ
この記事では、手話通訳について以下の内容を解説しました。
- 手話通訳とは
- 手話通訳の役割
- 聴覚障がい者とのコミュニケーション方法とメリット・デメリット
聴覚障がい者と健聴者のスムーズなコミュニケーションには手話通訳が必要です。一方で、手話通訳士の人員確保やスケジュール調整などの課題が挙げられます。窓口や受付業務など通訳が必要な場面の対応策の一つとして、AIの通訳サービスを活用することが有効です。
『KOTOBAL(コトバル)』は、タブレット1台でAIとオペレーターによるハイブリット通訳を行うことができるサービスです。最大32ヵ国の多言語に対応し、高齢者や障がい者のための音声筆談・手話通訳にも対応できます。専門性の高い話題や万が一の場合は、リアルタイムでのオペレーターの手話通訳にも対応可能です。
AIの通訳サービスを導入することで、さまざまな窓口業務において、格差のない公平なコミュニケーションの実現につながります。
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また、翻訳・通訳サービスをお考えの場合は、こちらの資料をご確認ください。
▼KOTOBAL(コトバル)の特徴
- 音声と一緒に翻訳されたテキストを透明ディスプレイに表示できる
- よく使う定型文を登録してフロントでの対応を効率的に行える
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- 高齢者・障がい者向けの音声筆談・手話通訳に対応している など