災害時に自治体が実施する外国人対応とは。平常時からの備えも重要!


近年、コロナ禍を経て在留外国人・訪日外国人の数がともに増加傾向にあります。

自治体では、国籍や言語、文化が異なる人たちと共に生きていく多文化共生の地域社会を目指すために、外国人への支援が求められています。

なかでも自然災害の発生時においては、言語や文化の違いによって混乱が生じたり、情報伝達がスムーズにできなかったりするケースが想定されます。

日本は災害大国とも呼ばれており、今後30年の間に南海トラフ地震や首都直下地震と呼ばれる大規模な地震が70%の確立で発生することも予測されています。

自治体の国際課や多文化共生課の担当者は、外国人への円滑な情報提供と避難時の支援を行えるように、必要な対応について確認しておくことが重要です。

この記事では、災害時に外国人対応が重要となる理由や自治体が実施する対応、平常時の対策について解説します。

なお、自治体による外国人支援に役立つ多言語災害情報システムについては、こちらの資料をご確認ください。

多言語災害情報システム

出典:国土交通省『自然の脅威を乗り越え、豊かな社会経済活動の礎を築く。


災害時に外国人対応が重要となる理由

日本人と外国人では、言語の壁や災害に関する知識の差、習慣の違いがあります。

外国人が日本で災害に直面すると、情報伝達の遅れや知識の不足などによって正しい行動が取れなくなったり、必要な支援が受けられなくなったりする可能性があるため、自治体によるサポートが重要です。


言葉の壁がある

日本語が分からない外国人にとって、緊急時の災害放送や避難所に関する情報などを正しく理解することは難しいといえます。

日常会話は問題なく行える場合でも、“高台”“余震”“避難”などの災害時特有の用語はなじみがなく、内容を理解できない人も少なくありません。


▼言語の壁に関する外国人の悩み

  • 災害時に出てくる用語を知らない
  • 直訳しても意味が分からない
  • 困り事を周りの人に伝えられない など

自治体では、外国人に必要な情報をタイムリーに伝えられるように、多言語による支援体制を構築することが求められます。


災害に関する知識の差がある

日本人と外国人は、自然災害や防災に関する知識・経験が異なります。

日本では大規模な地震の経験があり、幼少期から学校で防災教育や避難訓練が行われています。一方の海外では、国によって大規模な地震の経験がなかったり、学校や地域での防災教育が十分に行われていなかったりします。

日本の災害に関する知識が不足していると、以下の問題が生じることがあります。


▼災害に関する知識の不足によって生じる問題

  • 災害のことを知らず混乱が起きる
  • 避難方法や避難場所が分からない
  • 被災者の支援制度を知らない など

災害時に適切な行動を取ってもらうためには、平常時から防災に関するリテラシーの向上を図ることが重要です。


国や地域による習慣の違いがある

国や地域によって、生活スタイル、食事、宗教などの習慣に違いがあります。

避難所での生活環境や食事において、日本の習慣と異なることによる心理的なストレスを感じたり、周りの人とトラブルになったりするケースが考えられます。

自治体では、外国人の習慣に配慮した避難生活の支援を行うとともに、異なる文化や価値観に対する理解を深めるための日本人への情報発信が必要です。


災害時に自治体が実施する外国人対応

災害が発生したときに人命と生活を守るには、自治体が被害状況や避難場所などに関する情報を外国人に分かりやすく伝達できる体制を整える必要があります。


➀災害多言語支援センターを設置する

大規模な災害が発生した際は、自治体で災害多言語支援センターを設置します。

災害多言語支援センターは、災害時に避難所で生活を送る外国人を支援するための活動拠点です。2007年に発生した新潟県中越沖地震において、初めて新潟県で設置されました。

被災地を巡回して外国人のニーズ・困りごとを把握することで、行政機関や災害支援団体による支援を円滑に行う目的があります。


▼災害多言語支援センターが担う役割

  • 外国人被災者への多言語情報の提供
  • 避難場所における外国人被災者の安否情報や人数の把握
  • 外国人被災者のニーズの把握と災害対策本部への共有 など

出典:総務省『災害時における外国人対応について


②避難所に多言語表示シートやピクトグラムを設置する

避難所で生活する外国人被災者との意思疎通を円滑に行えるように、多言語表示シートやピクトグラムを設置することが有効です。


▼多言語表示シートのイメージ

画像引用元:総務省『災害時の多言語支援に係る情報ツールについて


多言語表示シートは、災害時や避難生活でよく使われる日本語を多言語で記載した用紙です。避難所での生活マナーを理解してもらったり、体調や食事について確認したりする際に役立ちます。


▼ピクトグラムのイメージ

画像引用元:総務省『災害時の多言語支援に係る情報ツールについて


ピクトグラムは、絵文字で視覚的に情報伝達を行うツールです。避難所内にある施設・設備の案内や食べられない食材の把握などに役立ちます。

なお、自治体による外国人支援に役立つ多言語災害情報システムについては、こちらの資料をご確認ください。

多言語災害情報システム

出典:総務省『災害時の多言語支援に係る情報ツールについて


平常時から外国人対応の準備を行うことが重要

災害時に外国人対応を円滑に行うには、平常時から備えをしておくことが欠かせません。ここからは、自治体が平常時に実施する災害対策について紹介します。


➀災害時外国人支援情報コーディネーター制度を利用する

災害時外国人支援情報コーディネーター制度は、災害多言語支援センターにおいて外国人対応を行う“情報コーディネーター”を養成する制度です。

災害時に行政機関から提供される情報は膨大になるほか、外国人被災者のニーズも多様となっています。情報コーディネーターは、日本語対応が難しい外国人被災者と行政との橋渡し役を担います。


▼情報コーディネーターの役割

  • 避難所における多言語での情報発信
  • 外国人被災者のニーズや困りごとの把握
  • 行政の支援制度と外国人被災者が持つニーズとのマッチング など

自治体が情報コーディネーターを養成して配置可能な体制を整備することで、言語の壁や知識の不足によって生じる問題の解決を図れます。


②外国人向けの防災リテラシー教育を行う

外国人が災害時に困りやすい“知識の差”を解消するには、防災リテラシー教育を行うことが必要です。日本における災害の種類や起こり得るリスク、正しい避難方法などに関する教育を行うことで、災害時に適切な行動を取れるようになります。


▼防災リテラシー教育の取り組み例

  • 公共施設での外国人向け防災・減災ポスターの掲出
  • 動画配信サービスを用いた防災啓発動画の配信
  • 留学生や技能実習生を対象とした防災教育と避難訓練の実施 など


③ハラール対応の非常食を用意する

外国人被災者が安心して避難生活を送れるように、ハラール対応の非常食を用意することも必要と考えられます。

ハラール対応の食事とは、イスラム文化圏の外国人に配慮した食事のことです。外国人被災者のなかには、避難所の支援物資や炊き出しにおいて宗教上の理由で「食べられるものがない」という人もいます。

自治体では、より多くの人が食べられる非常食を備蓄することが求められます。ハラール対応のほか、アレルギーやヴィーガンなどへの配慮も必要です。


④多言語翻訳ツールを導入する

自治体の職員が外国人とのコミュニケーションを円滑に取れるように、多言語翻訳ツールを導入することが望まれます。

多言語翻訳ツールの導入により、防災や災害発生後の情報を外国人の母国語で正しく伝えたり、避難所での必要な支援について確認したりすることが可能です。

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自治体での導入事例は、こちらをご確認ください。

自治体の導入事例


まとめ

この記事では、災害時の外国人対応について以下の内容を解説しました。

  • 災害時に外国人対応が重要となる理由
  • 災害時に自治体が実施する外国人対応
  • 自治体が平常時から行っておく災害対策


外国人が日本で災害に遭った際には、言語の壁や災害に関する知識の差、習慣の違いなどによって情報伝達が遅れたり、必要な支援が行き届かなかったりする可能性があります。

自治体では、災害発生後の情報提供や避難所での生活支援を円滑に行える体制を構築することが必要です。また、平常時から多言語対応や非常食の準備、防災リテラシーの向上を行うことも欠かせません。


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