ADR(客室平均単価)とは? ホテル経営の収益力や競争力に役立てるには
日本政府観光局(JNTO)が発表した『訪日外客数(2024年10月推計値)』によると、2024年10月の訪日外国人観光客数は331万2,000人となり、過去最多を記録した2024年7月の329万2,602人を上回りました。
また、統計を開始した1964年以来、過去最速で3,000万人を突破しており、今後も訪日外国人観光客の増加が期待されています。こうした動向を踏まえ、ホテル業界ではインバウンド需要の拡大に向けて収益性の見直しが求められています。その際、特に重要となる指標が“ADR”です。
この記事では、ADRの概要やADRと同じ視点で考えられるOCC、RevPARとの違い、ADR向上に向けた施策を解説します。
出典:日本政府観光局(JNTO)『訪日外客数(2024年10月推計値)』
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ADRとは
ADR(Average Daily Rate:客室平均単価)とは、収益性を計る重要な指標で客室一室当たりの平均単価のことです。1日単位で宿泊の売り上げ合計額を売れた客室数で割って計算します。
▼ADRの計算方法
売り上げの合計額 ÷ 売れた客室数 = ADR
例:売り上げが250万円で売れた客室数が100室の場合、ADRは25,000円
2,500,000(円)÷ 100(室)= 25,000(円)
ADRの見直しや稼働率を見直す場合、ターゲット市場の動向や競合の価格戦略を分析し、季節による需要変動や将来の需要予測を考慮した価格設定を行うことが重要です。過去のADRと目標のADRを立て、ホテル経営の見直しを図るのが第一歩となります。
OCC・RevPARとの違い
ホテル経営の基本であるADRとは別に、OCC(Occupancy Rate:客室稼働率)とRevPAR(Revenue Per Available Room:販売可能な客室一室当たりの売上高)というホテルの収益性を計る指標があります。その違いは以下のとおりです。
▼ADRとOCC、RevPARの違い
指標
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意味
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活用
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ADR
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客室平均単価
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販売した客室一室当たりの平均単価
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客室単価の設定や価格戦略を決める際に活用
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OCC
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客室稼働率
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販売可能な客室(※)のうち売れた客室の割合
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ホテルの混雑度を把握し、予約戦略を最適化
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RevPAR
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販売可能な客室一室当たりの売上高
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販売可能なすべての客室を考慮した収益性
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ADRとOCCを掛け合わせた総合的な収益性を分析
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▼OCCの計算式
売れた客室数 ÷ 販売可能な客室数 × 100 =OCC
例:ホテルの販売可能な客室数が140室で100室が売れた場合、OCCは約71%
100(室)÷ 140(室)= 71.4(%)
▼RevPARの計算式
ADR × OCC = RevPAR
例:ADRが25,000円でOCCが71%の場合、RevPARは17,750円
20,000(円)× 0.71 = 17,750(円)
ADRを上げるとOCCが下がり、逆にADRを下げるとOCCが上がるため、RevPARを含めた3つの数値をバランスよく意識することが大切です。
※長期休業中のフロアにある客室、メンテナンス中の客室などは除く
ADRを重要視する理由
ホテル経営において、適切なADRの管理は利益の安定化だけでなく、長期的な事業成長にも大きく影響を与えます。ここでは、ADRを重要視する理由を2つ解説します。
①収益の最大化
1つ目は、収益の最大化です。
ADRを管理することで、適切な料金設定や収益管理の成果などにつながり、収益の最大化を目指せます。
例えば、繁忙期でも低単価のまま販売している場合、すぐに予約が埋まっても本来なら単価を上げても売れた可能性があるため、収益機会を逃しているといえます。一方で、時期に関係なく高単価で販売し低稼働になっている場合、価格設定が適切でないために潜在的な顧客を逃している可能性があります。
このような状況を避けるためには、ADRを活用してホテルの稼働状況と価格設定のバランスを見直すことで、収益の最大化が期待できます。
②競争力の維持
2つ目は、競争力の維持です。
最近のインバウンド需要の拡大に伴い、市場の価格競争が激しくなることが予想されます。競合他社の新規参入に対抗するにはADRを戦略的に設定することが重要です。
例えば、地域の特色を生かした宿泊体験をはじめ、独自性のある顧客体験の提供が挙げられます。ホテルに宿泊する観光客の傾向や要望などを理解することも大切です。
単に安売りをするのではなく、ブランド価値を維持しながら適正価格での販売を実現することで、長期的な競争力を確保できます。
ADRを高めるためのホテル運営施策
ADRを高めるには顧客満足度を高め、適正価格でも選ばれるホテルをつくることが重要です。そのためには顧客ニーズを的確に捉え、魅力的なプランやプロモーションを展開し、利便性を向上させる工夫が求められます。
ここでは、ADRを高めるために有効な3つの施策について解説します。
①ニーズに合わせた宿泊プランの策定
1つ目は、顧客ニーズに合わせた宿泊プランの策定です。
顧客層ごとに最適な宿泊プランを提供することで、価格競争に陥ることなくADRを高めることが可能です。特定のニーズに応じたプランを設定することで、単価を維持しつつ満足度の向上につながります。
▼宿泊プランの例
顧客層
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プラン
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ビジネス
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7泊以上の宿泊で割引や朝食が無料になる長期滞在プラン
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カップル
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シャンパンやスイーツのサービス、夜景の見える部屋などの記念日プラン
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訪日外国人観光客
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地域の文化体験をセットにした宿泊プラン
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そのほか、ホテルの朝食を充実させることもADRを引き上げることにつながります。理由は素泊まりプランよりも朝食プランのほうが客室単価が高くなるためです。シェフが目の前で調理するライブキッチンやヴィーガン・ベジタリアン対応のメニューなどが挙げられます。
②プロモーションの工夫
2つ目は、プロモーションの工夫です。
季節やイベントに応じたプロモーションを展開し、価格以上の価値を訴求すること でADRの向上を狙うことができます。
▼プロモーション例
- 桜シーズンに、花見ができる専用観覧席やお弁当、和菓子などをセットにしたプラン
- 夏祭りシーズンに、花火が見える部屋と浴衣のレンタルなどをセットにしたプラン など
このように値引きをしなくても、高単価で魅力的な付加価値を提供することが重要です。
③多言語対応
3つ目は、多言語対応です。
訪日外国人観光客を取り込むためには、予約時から滞在中までスムーズに利用できる環境を整えることが欠かせません。
例えば、多言語対応のWebサイトやチェックイン時の翻訳ツール活用、トラブル時にスムーズな対応などを実現できれば、インバウンド需要を最大限に取り込むことが可能です。ストレスのない多言語対応が実現すると、ハイグレードの客室やプレミアムサービスの販売機会の創出にもつながります。
結果として顧客満足度向上とリピート率の向上につながり、ADRの維持・向上に貢献します。
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まとめ
この記事では、ホテルにおけるADRの概要や重要性とともに、収益力や競争力に役立てる方法について解説しました。
- ADRとは
- OCC・RevPARとの違い
- ADRを重要視する理由
- ADRを高めるためのホテル運営施策
ADRを高めるための具体策として、ニーズに合わせたプラン策定やターゲット層に合わせたプロモーションがカギを握ります。特に、訪日外国人観光客が増加している現在、多言語対応の強化により顧客満足度を意識することも大切です。
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