【2024年度版】インバウンド観光における最新の動向と課題とは
2022年10月にコロナ禍による水際措置が緩和されて以降、インバウンドが堅調に増加しています。国内の観光地がにぎわいを取り戻しつつあるなか、観光・宿泊業などにおいては外国人観光客の受け入れについてさまざまな課題が生じています。
インバウンド観光の需要に対応して、消費の拡大や地方部への誘客による売上の増加につなげるには、外国人観光客が安心かつ快適に過ごせる受け入れ環境を整備することが重要です。
この記事では、インバウンド観光の最新動向や課題、事業者が取り組む対応策について解説します。
なお、インバウンドの集客方法についてはこちらの記事で解説しています。
インバウンド集客に役立つ施策6選。取り組む際の注意点について
また、多言語対応充実度チェックリスト付きの資料はこちらからご確認いただけます。
インバウンド観光の動向
近年、訪日外国人旅行者数や外国人観光客による消費額が増加傾向にあり、インバウンド観光はコロナ禍前の水準まで順調に回復しています。
訪日外国人旅行者数はコロナ禍前を上回る勢い
2024年7月の訪日外国人旅行者数は約329万人となり、コロナ禍前の2019年同月比から110%の回復が見られています。
▼訪日外国人旅行者の推移
画像引用元:観光庁『観光の現状と今後の取組』
2024年1~7月までの外国人旅行者数の総数は約2,107万人となり、下半期も同じペースが続けば昨年を大きく上回る3,500万人に到達すると見込まれています。
また、観光庁の『訪日外国人の消費動向』によると、日本への主な来訪目的には「観光・レジャー」が全体の84.6%を占めており、街歩きや食文化の体験、ショッピングなどを楽しむ外国人観光客が多くなっています。
出典:観光庁『観光の現状と今後の取組』『訪日外国人の消費動向』
訪日外国人旅行者の消費額は過去最高のペース
2024年4-6月期の訪日外国人による消費額は約2.1兆円となっており、四半期として過去最高を記録しています。このペースで進めば、2024年の消費額は8兆円に到達して、コロナ禍前となる2019年の消費額約4.8兆円を大きく上回る可能性が考えられます。
▼訪日外国人旅行者による消費額の推移
画像引用元:観光庁『観光の現状と今後の取組』
また、消費額を費用別にみると、宿泊費が33.0%ともっとも多く、次いで買い物代(30.9%)、飲食費(21.7%)の順に多くなっています。
▼訪日外国人旅行者による消費額の構成比
画像引用元:観光庁『インバウンド消費動向調査 2024年4-6月期の調査結果(2次速報)の概要)』
消費額の増加は、アフターコロナだけでなく為替レートの円安も追い風になっていると考えられます。インバウンド観光の需要拡大に伴い、宿泊業・飲食業・小売業の売上にもプラスの影響をもたらしていることがうかがえます。
出展:観光庁『観光の現状と今後の取組』 『インバウンド消費動向調査 2024年4-6月期の調査結果(2次速報)の概要)』
インバウンド観光の課題と対応策
インバウンド観光の課題として、外国人観光客の受け入れ環境や需要に対する人的リソースの不足などが挙げられます。観光・宿泊業に携わる事業者は、インバウンド観光の需要に対応できる体制を整備することが重要です。
なお、インバウンド施策には補助金を活用できる場合があります。詳しくは、こちらをご確認ください。
【宿泊施設向け】インバウンド対策に使える補助金ガイド(2024年版)
➀多言語対応の遅れ
ホテル・旅館やレストラン、観光案内所などにおいて、多言語対応が広く浸透していない課題があります。
観光庁が訪日外国人旅行者を対象に実施した『令和5年度「訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート」調査結果』によると、旅行中に困ったこととして言語に関する回答が挙げられています。
▼旅行中に困ったこと
● 多言語表示の少なさ・分かりにくさ(13.4%)
● 施設等のスタッフとのコミュニケーション(22.5%)
外国人観光客にストレスなく安心して旅行を楽しんでもらうには、多言語での情報提供や円滑なコミュニケーションを取れるようにすることが必要です。
▼多言語対応の取り組み
● 観光案内所や施設のエントランスで言語表示の切り替えができるデジタルサイネージを設置する
● 観光・宿泊施設の案内冊子や飲食店のメニューを多言語で表示する
● 窓口対応に多言語でのリアルタイム通訳ができるITツールを利用する など
なお、ホテルや自治体における多言語対応の事例はこちらで解説しています。
多言語対応の手段とは? ホテル業界と自治体の成功事例4選
出典:観光庁『令和5年度「訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート」調査結果』
②公共交通機関の利便性
公共交通機関の利用に関して、乗り場・経路・乗り換え方法などの情報が不十分となっていたり、二次交通が不足していたりする課題があります。
特に地方部では交通手段が限定されているため、「どのように目的地までアクセスすればよいか分からない」と困る外国人観光客も多いと考えられます。
観光・宿泊施設においては、インバウンド観光のニーズを踏まえて交通手段の確保やアクセスに関する分かりやすい情報提供を行うことが重要です。
▼公共交通機関の利便性を高める取り組み
● 空港やターミナル駅、宿泊施設から観光地までのシャトルバスを運行する
● 乗り換え案内・時刻表・運行案内の情報を把握できるアプリケーションを導入する
● 宿泊施設でレンタルの自転車・自動車を整備する
● 多言語対応のレンタカーやシャトルバスの予約システムを導入する など
③観光需要に対する人手不足
インバウンド観光の需要が増加する一方で、観光地・観光産業における人材不足によって供給が追い付かなくなる課題が見られています。
外国人観光客の受け入れ体制を整備するには、生産性の向上や人材確保に向けた取り組みを強化することが必要です。
▼人材不足を解消するための取り組み
● ITツールやシステムを活用して業務の効率化を図る
● スタッフの待遇改善を図り、人材採用を促進する
● 外国人労働者の受け入れに向けて情報発信と必要な環境整備を行う など
なお、外国人労働者を採用する際の課題についてはこちらの記事をご確認ください。
外国人労働者を採用する際の課題。人材確保を円滑に進めるポイント
リアルタイム通訳が可能な『KOTOBAL(コトバル)』の詳細については、こちらの資料をご確認ください。
④Wi-Fi・キャッシュレス決済の未設置
Wi-Fi・キャッシュレス決済が未設置の施設では、インターネットによる情報収集や観光地でのショッピングが不便になり、満足度にも影響する可能性があります。
観光庁の『令和5年度「訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート」調査結果』によると、旅行中に困ったこととして以下の回答が挙げられています。
▼旅行中に困ったこと
● フリーWi-Fi環境(9.6%)
● クレジット・デビットカードの利用(7.0%)
● その他決済方法(4.8%)
外国人観光客の快適な滞在を支援するには、観光・宿泊施設や公共交通機関においてWi-Fi・キャッシュレス決済を導入することが必要です。
出典:観光庁『令和5年度「訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート」調査結果』
⑤宿泊先地域の偏り
インバウンド観光の需要は、宿泊先地域によって偏在している傾向があります。
外国人延べ宿泊者数はアフターコロナによって増加傾向にありますが、約7割が三大都市圏に集中しており、地方部との差が見られています。
▼外国人延べ宿泊者数の推移
画像引用元:観光庁『観光の現状と今後の取組』
地方部への誘客が進まない理由としては、国際線の発着がなくアクセス面で不便なことや、地方の魅力について十分に知られていないことなどが考えられます。
▼地方部への誘客を促進する取り組み
● 地域ならではの観光資源を生かした付加価値を創出する
● WebサイトやSNSなどで地域の魅力を発信する
● 空港やターミナル駅からの二次交通を充実させる など
出展:観光庁『観光の現状と今後の取組』
⑥オーバーツーリズム
オーバーツーリズムは、観光客の急増によってその地域で暮らす人々や自然環境、景観などに悪影響を及ぼすことを指します。
外国人観光客が集中する場所では、公共交通機関や道路の混雑、マナー違反による地域住民の生活への影響などのさまざまな課題が生じています。
このような課題に対応するには、地域住民における生活の質を確保しつつ、外国人観光客への啓発や混雑緩和のための取り組みを行うことが重要です。
▼オーバーツーリズムを防止・抑制する取り組み
● スマートごみ箱の設置
● 多言語で記載した観光マナー啓発看板の設置
● 施設の入場チケットや運賃支払いの多言語化・キャッシュレス化
● 観光施設や駐車場の予約システム導入 など
まとめ
この記事では、インバウンド観光について以下の内容を解説しました。
● インバウンド観光の動向
● インバウンド観光の課題と対応策
訪日外国人旅行者数が増加してインバウンド観光の需要が高まるなか、観光・宿泊施設や公共交通機関などでは、外国人観光客の受け入れ環境を整備することが求められています。
なかでも多言語対応は、滞在中の利便性や満足度を左右する重要な要素といえます。外国人観光客との円滑なコミュニケーションや情報提供の充実化を図るために、多言語対応に役立つ通訳サービスを活用することも一つの方法です。
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