自治体DXの目的と現状。推進に役立つツールやサービスとは
近年、IT技術を浸透させて生活やビジネスモデルを変革させる“DX(デジタルトランスフォーメーション)”が社会全体で推進されています。なかでも地域住民にとって身近な行政を担う自治体は、DXの推進において重要な役割を担います。
地方部の人口減少や高齢化などのさまざまな課題が顕在化するなか、地域経済の活性化、住民サービスの維持・向上を図るには、自治体DXに取り組むことが重要となっています。
この記事では、自治体DXの目的や現状、推進に役立つツール・サービス、取り組み事例について解説します。
なお、自治体DXに役立つ通訳・翻訳サービスについてはこちらの資料にまとめています。併せてご確認ください。
自治体DXに取り組む目的
自治体DXとは、市区町村がデジタル技術を活用して制度や組織の変革を図ることを指します。総務省の『自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画』では、自治体DXの目的として以下が示されています。
▼自治体DXに取り組む目的
● 住民の利便性向上
● 行政サービスの向上
● データ活用による新たな価値の創出
自治体での行政手続きをオンラインで簡単に行える仕組みを整備すると、窓口まで出向く必要がなくなります。仕事・育児に忙しい人や、外出が難しい人でも行政手続きをスムーズに行えるようになり、利便性の向上につながります。
また、紙媒体で行っていた業務プロセスをデジタル化すると、職員の業務効率化を図ることが可能です。自治体の労働生産性を高めることで、よりよい行政サービスの提供に人的資源を投入できるようになります。
さらに、地域・組織間でのデータ連携を円滑に行える体制を構築すると、民間による新たなデジタルビジネスが創出されることが期待できます。これは地域経済の持続的な成長と国際競争力の強化にもつながると考えられます。
出典:総務省『自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画』
自治体DXの現状
自治体DXの推進状況についてまとめられた総務省の調査結果『自治体DX・情報化推進概要』によると、DX推進専任部署を設置している都道府県は全団体となっている一方、市区町村は902団体と全体の52.0%になっています。
▼DX推進専任部署の設置状況
画像引用元:総務省『自治体DX・情報化推進概要』
また、DX推進のための全体⽅針を策定している都道府県は全団体となっているのに対して、市区町村は862団体と全体の49.7%にとどまっています。
▼DXを推進するための全体方針の策定状況
画像引用元:総務省『自治体DX・情報化推進概要』
市区町村の全体方針に掲げられている事項については、「行政手続きのオンライン化(96.6%)」がもっとも多い結果となりました。
▼市区町村の全体⽅針に掲げられている事項(862団体中)
画像引用元:総務省『自治体DX・情報化推進概要』
AIの活用や官民データの活用推進、電子決裁の推進などの取り組みについては、自治体によって差がある状況です。
出典:総務省『自治体DX・情報化推進概要』
自治体DXの推進に役立つツール・サービス
自治体DXを推進するには、ツール・サービスを導入して業務プロセスや行政手続きのデジタル化を図ることがポイントです。
①自治体窓口DXSaaS
自治体窓口DXSaaSは、職員による窓口業務を支援するITシステムです。
これまで課をまたぐ行政手続きにおいては、来庁者がそれぞれの申請書を記入して異なる窓口を移動して対応する必要がありました。自治体窓口DXSaaSを導入することで、関連する行政手続きを一箇所の窓口で受付・処理できるようになります。
これにより、窓口業務の効率化を図れるほか、「複数の窓口を回る」「何度も同じ項目を記載する」といった来庁者側の負担も軽減することが可能です。
事業者から提供されている自治体窓口DXSaaSの基本機能には、以下があります。
▼自治体窓口DXSaaSの基本機能
● 来庁者の申請内容に応じた窓口受付や案内事項の確認
● 基幹系システムのデータを活用した申請書の作成
● マイナンバーカードから読み取った個人情報の自動入力
● マイナポータルや公共サービスなどとの連携
自治体の窓口業務に関するDXについてはこちらの記事で解説しています。
自治体窓口DXとは? 概要や取り組みに合わせたサービスの紹介
②AIチャットボット
AIチャットボットは、ユーザーが入力した質問に対してAIが自動で回答するプログラムです。自治体のWebサイトやオンライン申請ページなどにAIチャットボットを導入することで24時間356日の対応が可能となり、行政サービスの向上を図れるほか、職員による問い合わせ対応の負担軽減につながります。
▼自治体におけるAIチャットボットの活用例
● ライフイベント関連の手続き案内
● 行政サービスに関する問い合わせ・相談対応
● 地域情報の発信
● 外国人向けの多言語案内 など
③RPA
RPA(Robotic Process Automation)は、PCを用いた定型的な操作を自動化するツールです。PC上の操作を処理するシナリオを作成して、大量の定型作業や複数のシステム間を連携した操作を自動化することが可能です。
自治体で行われる膨大なバックオフィス業務を自動化することで、業務負荷の分散化や長時間労働の削減、入力ミスの防止などにつながります。職員がコア業務にシフトできるようになれば、行政サービスの向上にも貢献します。
▼RPAで自動化を図れる自治体の業務例
● 個人番号カード交付管理
● 住民税申告書や所得税確定申告書の入力
● 医療・介護・子育てに関する資格の管理
● 各種認定申請書への情報入力・認定証の発行 など
④多言語通訳サービス
多言語通訳サービスは、外国人との対面でのコミュニケーションを支援するサービスです。タブレットまたは専用機器に音声を入力すると、設定した外国語に翻訳された音声・テキストが出力される仕組みとなります。
在留外国人に対する行政手続きを行う課や、多文化共生・国際課を担当している職員では、外国人との円滑な対話に課題を抱えている現場も少なくありません。
▼自治体における多言語対応の課題
● 主要言語を話せる職員がいない・少ない
● 通訳者を手配するためのスケジュール調整が大変
● 希少言語に対応できる通訳者の確保が難しい など
多言語通訳サービスを活用すると、通訳者を介さずに幅広い言語でコミュニケーションを取れるようになり、地域の外国人住民向けサービスの向上を図れます。
コニカミノルタでは、AIとオペレーターによるハイブリッド通訳を行えるサービス『KOTOBAL(コトバル)』を提供しています。最大32カ国の多言語通訳・翻訳に加えて音声筆談・手話通訳に対応しており、誰ひとり取り残さないコミュニケーションを実現します。
自治体における多言語通訳サービスの活用については、こちらの資料をご確認ください。
なお、市役所・区役所での外国人対応の課題はこちらの記事で解説しています。
市役所・区役所での外国人対応をよりスムーズにするには
自治体DXの取り組み事例
ここからは、デジタル技術を活用して自治体の業務効率化や行政サービスの向上につなげた事例を紹介します。
受付順番案内システムの導入
東京都の市役所において、窓口に受付順番案内システムを導入して来庁予約制度の運用を開始した事例です。
これまで課ごとに発券機を契約しており管理が煩雑になっていたことに加えて、窓口の混雑が発生していました。受付順番案内システムを導入することで、発券機と来庁予約を連動させた運用を実現しました。
▼受付順番案内システムで実現したこと
● 来庁者によるWebでの来庁予約と混雑確認
● 一つの発見番号を利用した複数窓口での呼び出し対応
● 職員による柔軟な発券設定のカスタマイズ
これにより、窓口業務の効率化と住民の利便性向上につながっています。
RPAとAI-OCRによるワクチン接種予約
広島県三原市において、RPAとAI-OCR(※)を活用してアナログ×デジタルを組み合わせたワクチン接種予約の仕組みを構築した事例です。
当初、ワクチン接種予約を電話とインターネットで受付していましたが、ITを使えない高齢者が多く、窓口の混雑と苦情が発生している状況でした。これを踏まえて、RPAとAI-OCRを活用して予約を受け付ける方式を導入しました。
▼RPAとAI-OCRのワクチン接種予約で実現したこと
● AI-OCRによる返送ハガキの読み取り
● RPAで集計したデータを利用した台帳作成
ハガキとIT技術を用いたハイブリッド対応により、職員による事務作業の削減につながったほか、オンライン予約が困難な高齢者にも円滑なワクチン接種を実施できたとのことです。
※文字を正確に認識してデータに変換する機能。
多言語通訳サービスを用いた相談窓口対応
埼玉県川口市では、増加する外国人住民の相談窓口に対応するために多言語通訳サービスの『KOTOBAL(コトバル)』を導入しました。
▼KOTOBALを用いた相談窓口での対応
窓口に外国人相談員を配置していましたが、住民のなかにはトルコ語しか話せない人も多く、通訳ができる人材の確保が困難な状況でした。AI通訳機を活用していたものの、音声認識や行政用語の翻訳に関する精度にも問題がありました。
▼KOTOBALの導入で実現したこと
● 行政用語や医療用語の正確な翻訳
● オペレーターによるビデオ通話を用いた専門的な対応
● 外国人住民との心の通ったコミュニケーション
KOTOBALを導入したことで、外国人住民の生活相談を円滑に行えるようになり、きめ細かなサポートの実現につながっているとのことです。
詳しくは、こちらをご確認ください。
埼玉県 川口市 市民生活部 協働推進課 多文化共生係 様
まとめ
この記事では、自治体DXについて以下の内容を解説しました。
● 自治体DXに取り組む目的
● 自治体DXの現状
● 自治体DXの推進に役立つツール・サービス
● 自治体DXの取り組み事例
自治体DXの推進は、業務効率化による労働生産性の向上や、地域住民の利便性向上、よりよい行政サービスの提供を目指すうえで重要な取り組みです。
窓口業務やバックオフィス業務の省人化・自動化を行ったり、住民とのコミュニケーションを円滑化したりするツール・サービスを活用することがポイントです。
『KOTOBAL(コトバル)』は、タブレット1台で最大32カ国の外国語をリアルタイムで通訳・翻訳できるサービスです。透明ディスプレイを介してハンズフリーでのリアルタイムな通訳・翻訳を行えるほか、専門的な内容についてはオペレーターによるビデオ通話で対応できます。
KOTOBALの詳細については、こちらをご確認ください。